葵むらさき小説ブログ

大人のためのお伽噺を書いています。作品倉庫: https://www.amazon.co.jp/%E8%91%B5-%E3%82%80%E3%82%89%E3%81%95%E3%81%8D/e/B004LV0ABI/ref=aufs_dp_fta_dsk

DV幽霊 第20話(了)

「終わりましたよー」 熱田氏の声で、私は目を開けた。 のろのろと起き上がると、最初に、玉の汗を浮かべて今にも気絶しそうに茫然としている森下氏の顔が目に入った。 そんなに、体力を使ったのか。 私には意外に思われた。 経を唱えたり、あきみの兄貴に語…

DV幽霊 第19話(全20話)

微塵も、身動きできなかった。 天井しか、見ることができない。 そして、その時俺の脳内にある言葉はただ一つ 「殺してくれ」 だった。 第17話 UP #小説 #ホラー

DV幽霊 第18話(全20話)

私は衝動的に、自分の周囲を見回した。 右を。 左を。 後ろを。 その姿は、どこにも見えなかった。 だが私には、その存在が、目の前の熱田氏や森下氏よりはるかに鮮明に、感じ取られていた。 第17話 1月21日UP #小説 #ホラー

DV幽霊 第17話(全20話)

熱田氏は人によって、照射する光線の種類を変えているのか? そうだとしたら、不公平じゃないか。 俺にはあんなにけったくそ悪い思いさせた癖に、なんでこの女には気持ちいい光線を当ててんだよ。 第17話(全20話) UP #小説 #ホラー

DV幽霊 第16話(全20話)

「あるいは」熱田氏はもう一度私の顔を見ながら超ピンク色の唇で言った。「その女の人がこの人を蹴ったのかしら」 「──」 ごつごつして太い筋の盛り上がった足の姿が浮かぶ。 第16話(全20話) UP #小説 #ホラー

DV幽霊 第15話(全20話)

ごめんなさい。 子供のように心の中で泣き叫んだ。 疑ったりしてごめんなさい。 はい、確かに出てます、熱田スペシウム。 私が悪かったです。 第15話(全20話) 1月7日UP #小説 #ホラー

DV幽霊 第14話(全20話)

次回の“セッション”の予約を取り付けた後、熱田氏は帰っていった。 一人残された部屋で、私は自分の内部に緊張が高まりゆくのをひしひしと感じた。 足は、今夜も出るのか。 それとも、お札によって封印され、姿を現さないのか。 私はテレビをつけた。 バラエ…

#DV幽霊 第13話(全20話)

「ここはまるで」 熱田氏は言葉を切り、もういちど私の部屋の中を見回した。 「何かの結界を張られたように、清浄だわ」 第13話(全20話) 12月24日UP #小説 #ホラー

DV幽霊 第12話(全20話)

「あの、セルライトビームでしたっけ」 「熱田スペシウムよ」 熱田氏は私を見ずに答えた。私はハッと硬直し、私もまた熱田氏を見ることができなかった。 第12話(全20話) 12月17日UP #小説 #ホラー

DV幽霊 第11話(全20話)

翌朝、洗面所の鏡を覗くと、やはり私の顔は無傷のままだった。 一体、どういうしくみなのだろう。 私の中に、ある意味“興味”と呼べるものさえ生まれた。 間違いなく痛いのに、間違いなく触感はあるのに、間違いなく蹴転がされているのに、どうしてその痕跡は…

DV幽霊 第10話(全20話)

翌朝目覚めてからも、首筋や後頭部、そして顔面全体に、痛みが残っていた。 私が意識を失った後も、足は私を踏みつけ続けていたのだろうか。 さぞや顔面痣だらけになっている事だろう―― そう思いつつ覗いた洗面所の鏡の中の私の顔には、傷一つなかった。 い…

DV幽霊 第9話(全20話)

熱田氏は別れ際、また電話で連絡をすると言った。 私は咄嗟に、電話ではなくメールで連絡するようにと依頼した。 依頼しながら、たとえメールが届いたとしても恐らく返信しないだろうと思った。 ことによると読みさえもしないかも知れない。 もう、この人間…

DV幽霊 第8話(全20話)

私が呆然と熱田氏を見つめている間、熱田氏は「機嫌好き無表情」とでも表現し得るような顔で、ただ私を見つめ返していた。 ニヤニヤしてもいなければニコニコもしていない、さりとて怒りや悲嘆の感情を浮かべているわけでもない―― いつの間に呼んだのか、テ…

DV幽霊 第7話(全20話)

結論から言うと、そのサイトの主への連絡先は、見つからなかった。 だがそのサイトが相互リンクしている他のサイトの中に、主が運営(というのか)している浄霊施設(というのか)への連絡先メールアドレスの表記が見つかった。 私はそのアドレスに、相談メ…

DV幽霊 第6話(全20話)

出てきた検索結果には、さまざまなジャンルのWEBページが並んでいた。 武道、サッカー、ゲーム、そして。 「霊の足に蹴られた」 という記事も、そこにはあった。 私はそれらを――つまり「足の霊に蹴られた」もとい「霊の足に蹴られた」という記述のあるものを…

DV幽霊 第5話(全20話)

そういえば、これも理不尽の一種ではある。 何がかというと、靴下だ。 その日は休日で、私は洗濯をしそれを干し、乾いた後取り込んで畳んでいた。 一人暮らしの身であるため、洗濯物がどうにも溜まりやすい。 というと、これこそが理不尽に聞こえるかも知れ…

DV幽霊 第4話(全20話)

この理不尽さ加減は――と、嘆いてばかりいても勿論はじまらない。 私は思った。 足と『対話』をすべきではないのかと。 線香を焚いたとき、それは『仏との対話』になるのだと、仏壇店の店員に私は教わった。 その時はただ薄らぼんやりと、そういうものか。程…

DV幽霊 第3話(全20話)

実際この理不尽さ加減というのはどうなのだろう。 例えば、天気だ。 古代の人は、雷が落ちたとか、日照りが続く、逆に異様な降水量だ等といった「穏やかならざる天候」を、神の、自然のスピリットのようなものの怒りと捉えていた。 供え物をしたり貢物をした…

DV幽霊 第2話(全20話)

この理不尽さ加減はどうだろう。 前述の、その暴挙の中で、私の脳裡にまた別の想いが生まれたのだった。 ――こいつは、俺に“供養”をして欲しいのではないのか? そう。 この足は、私を頼って、頼りにして私の前に(というか正確には背後にだが)現れたのでは…

DV幽霊 第1話(全20話)

この理不尽さ加減はどうだろう。 足は、私の腰をさっきから蹴りつづけている。 いつからだろう。 いや、腰を蹴りつづけられているのがではなく、この、足が私にとり憑いているのは。 きっかけは何だったか。 バグか。 ウイルスなのか。 もしかしたら、エロ動…